【2026年度版】社会保険扶養の新ルール徹底解説(2026/3/26)
「130万円の壁」という言葉を聞いたことがありますか?パートやアルバイトで働く人が、年収130万円を超えると親や配偶者の健康保険の「扶養」から外れてしまうという問題です。
2026年4月から、この「扶養に入れるかどうか」の判断方法が大きく変わります。厚生労働省が新しいQ&Aを公表しましたので、解説します。
そもそも「扶養」って何?
会社員の家族(配偶者や子ども、親など)は、自分で保険料を払わなくても、家族の健康保険に「扶養」として入ることができます。これを被扶養者(ひふようしゃ)といいます。
ただし、扶養に入れるのは「年収が一定額未満」の人だけです。
| 対象者 | 年収の基準額 |
|---|---|
| 原則 | 130万円未満 |
| 60歳以上 または 一定の障害者 | 180万円未満 |
| 19歳以上23歳未満の扶養親族(配偶者を除く) | 150万円未満 |
何が変わるの?新ルールのポイント
これまでは、給与明細書や課税証明書などを使って「実際にいくら稼いだか」で判断していました。しかし新しいルールでは、「労働条件通知書(雇用契約書)に書かれた内容」をもとに年収を計算することができるようになります。
| 比較項目 | これまでの方法 | 新しい方法(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 年収の判断材料 | 給与明細書・課税証明書など(実績) | 労働条件通知書の時給・労働時間・日数などで試算 |
| 残業代の扱い | 実際の残業代も含めた収入で判断 | 契約書に規定のない残業代は含めない |
| メリット | 実績ベースで正確 | 就職・契約時点で扶養に入れるかどうかがわかる |
つまり、働く前から「扶養に入れるかどうか」が予測しやすくなるということです。「130万円を超えそうだから仕事を減らそう」という「就業調整」をなくす狙いがあります。
新ルールのQ&Aをわかりやすく解説
Q. なぜ「労働契約書の内容」で年収を判断するようにしたの?
これまで「年収が130万円を超えそう」と思った人が、扶養から外れないように意図的に働く時間を減らす「就業調整」が問題になっていました。新ルールでは、働く前から年収が予測できるようにして、こうした無駄な「働き控え」をなくすことが目的です。契約書に書かれていない残業代(臨時収入)は計算に含めません。
Q. 「シフト制」で労働時間が決まっている場合は?
「シフトによる」など、具体的な労働時間が契約書に書かれていない場合は、新しいルールでの判断ができません。この場合は従来どおり、給与明細書や課税証明書で年収を判断します。
Q. 複数のアルバイトを掛け持ちしている場合はどうなる?
すべての勤務先の労働条件通知書を提出し、それぞれで計算した見込み年収を合算して判断します。どれか一つでも通知書がない場合は、全体を従来の方法(給与明細等)で判断します。
Q. 「給与収入のみ」という申立書が必要?
はい。新ルールで扶養認定を受けるには、労働条件通知書に加えて「給与収入のみである」という申立書も必要です。課税証明書で代替することはできません(課税証明書は前年の収入を証明するものなので)。扶養の認定時だけでなく、その後の定期確認の際にも申立書が必要です。
Q. 残業が多くて年収が130万円を超えたら扶養が取り消される?
必ずしも取り消されるわけではありません。残業代(臨時収入)によって130万円を超えた場合でも、「社会通念上妥当な範囲」であれば取り消す必要はないとされています。ただし、最初から残業代を見越して契約書上の賃金や労働時間を不当に低く記載していた場合などは、認定を取り消すことがあります。
Q. 「社会通念上妥当な範囲」って具体的にいくら?
具体的な金額は定められていません。金額を決めてしまうと「新たな年収の壁」が生まれてしまうこと、また一時的な事情や職種によっても異なるため、ケースバイケースで判断されます。
Q. 認定後に時間外労働が恒常的にあったと判明した場合、認定時に遡って取り消される?
遡って取り消されることはありません。「契約段階では時間外労働の見込みがなかった」として認定されているため、認定時に問題はなかったとみなされます。扶養の削除手続きは、「認定の適否を確認した日」以降の扱いになります。ただし、申立書や通知書の記載に誤りがあったなど、認定時に不正があった場合は認定時に遡って取り消されます。
Q. 契約を更新しただけでも書類を出し直す必要がある?
はい。時給や労働日数が変わらない単純な契約期間の更新であっても、その都度、最新の労働条件通知書の提出が求められます。
認定後の定期確認スケジュール
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 認定から1年以内 | 確認手続きは不要 |
| 2年目以降 | 少なくとも年1回、保険者が扶養の適否を確認(最新の労働条件通知書等を提出) |
| 契約更新・条件変更のたび | その都度、内容がわかる書類の提出が必要 |
新ルールはいつから?遡って適用される?
新ルールは2026年4月1日以降に認定申請するケースから適用されます。4月1日より前にさかのぼって認定する場合は従来のルールが適用されます。
労務担当者が知っておくべきポイントまとめ
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 書類の準備 | 扶養に入るには労働条件通知書(雇用契約書)が必要 |
| 申立書も必須 | 「給与収入のみ」の申立書が別途必要。課税証明書では代替不可 |
| 掛け持ちの場合 | 全事業所の通知書が必要。年収は合算して判断 |
| 残業代の扱い | 契約書に規定のない残業代は年収に含めなくてOK(不正はNG) |
| 契約更新時 | 更新のたびに最新の通知書の提出が求められる |
| 適用開始日 | 2026年4月1日以降の認定申請から適用 |
参考:厚生労働省「労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取扱いに係るQ&A(第2版)」(令和8年3月9日)
