最低賃金の引き上げ、もう他人事ではありません(2025/8/4)
中小企業がいま直面する最低賃金の壁を乗り越える“2つの具体策”とは?
「また最低賃金が上がるのか…」
「人件費の負担が重くなる一方だ」
「うちみたいな小さな会社にはもう限界」
最近、福岡の中小企業経営者の皆さんから、そんな切実な声を多く聞くようになりました。
2025年度も最低賃金の引き上げが確実視されており、人手不足と賃金上昇の“ダブルパンチ”に頭を抱えている企業は少なくありません。
しかし、何も手を打たずに「我慢」と「人件費削減」だけでやり過ごすのは限界があります。
今こそ、経営視点で“賢く”乗り越える対策が必要です。
今回は、「価格転嫁」と「残業削減」という2つの切り口から、中小企業でもすぐに取り組める最低賃金対策を解説します。
■ 価格転嫁できていますか?
~いつまで“値上げできない体質”を続けますか~
最低賃金の上昇により、真っ先に影響を受けるのがパート・アルバイト・時給社員の人件費です。
時給が50円上がれば、1日8時間・月20日勤務で月8,000円。
10人いれば年間100万円近いコストアップになります。
この分を「内部努力」でカバーしようとする企業が多いのですが、限界があります。
▶そこでまず問いたいのが、「価格転嫁、できていますか?」という点です。
・長年、取引価格が据え置きのまま
・値上げ交渉をすると取引停止されるのではと恐れて言い出せない
・サービス価格の見直しを避けている
こうした“遠慮体質”が根強く残っている中小企業では、最低賃金の上昇がダイレクトに利益を圧迫します。
● 価格転嫁ができないリスク
最低賃金が引き上げられる中で、価格転嫁ができないまま人件費だけが増え続けてしまう状態は、企業体力を徐々に削っていく危険な構造です。
特に原価に占める労務費の割合が大きい業種では、売上が変わらないのに人件費だけが膨らんでいくという“赤字スパイラル”に陥るリスクもあります。
このような状況に陥る前に、「収益構造の見直し」や「業務効率化による人件費の最適化」など、できることから早めに手を打つことが不可欠です。
● 価格転嫁の実践ステップ
- 人件費を含む原価構造を見直す
→どの業務・製品にどれだけ人件費がかかっているかを把握 - 顧客・取引先への伝え方を工夫する
→「賃上げは社会的責任」として背景を丁寧に説明 - 付加価値の提示と同時に価格見直しを提案
→「高くなった分の価値」が伝わるよう提案内容を強化
▶ 弱気ではなく、“納得される値上げ”を設計することが重要です。
■ 無駄な残業、見て見ぬふりしていませんか?
~「削れる残業」は利益に変わる~
最低賃金対策というと、つい「時給の引き上げ」ばかりに注目しがちですが、実はそれと同じかそれ以上に、人件費全体を圧迫しているのが“残業代”です。
無駄な残業を見直すことで、コストを抑えながら生産性を高めることが可能になります。
例:
月給25万円の社員が毎月20時間残業
→ 残業代:約37,500円(25万円÷160時間×1.25×20h)
→ 年間約45万円が“残業代”として加算されていることになります。
この残業が、「本当に必要なものか?」をチェックするだけで、
最低賃金の引き上げ分以上のコスト削減になる可能性もあります。
● 無駄な残業を減らす3つの視点
- 業務の「見える化」
→誰が、何に、どのくらい時間を使っているかを可視化(タスク管理・勤怠分析) - 残業ルールの再構築
→「原則禁止」「上司の事前承認制」に変更
→ 就業規則に明文化し、指導ができる体制に - 評価制度の見直し
→「長く働く人が偉い」から「時間内で成果を出す人が評価される」文化へ
▶ 綾部事務所では、就業規則の改定支援や評価制度の設計も行っています。
だらだら残業については以前掲載した記事もご参照ください。
https://www.ayabesr.com/info/20250702163922.html
■ 最低賃金対策は「攻めの経営」につながる
賃金上昇は、確かに企業にとって重い負担です。
しかし、だからこそ、
・原価の可視化と価格見直し
・生産性を高めるための無駄削減
・働き方の改革と仕組みの構築
を進める“きっかけ”にもなります。
▶ それは単なる防衛ではなく、「経営体質を強くする攻めの一手」にもなり得るのです。
■ 綾部事務所がサポートする、実践型の最低賃金対策
綾部事務所では、中小企業向けに次のようなサポートを提供しています。
・人件費の見直しと価格転嫁に向けた戦略設計
・残業削減に向けた就業規則・勤怠運用の改善
・評価制度や業務効率の見直し支援
・労務トラブルを未然に防ぐ仕組みの整備
・労働環境改善による「定着率UP」のコンサルティング
「価格転嫁の相談先がない」
「就業規則が古くて対応できていない」
「社員にどう伝えたらいいかわからない」
という方こそ、私たちにご相談ください。
■ まとめ
最低賃金の引き上げに対して、やるべきことは“コストを減らす”だけではありません。
・自社の価値を正しく伝えて価格に反映する「価格転嫁」
・非効率な働き方を見直す「残業削減」
・これらを実現する「制度と仕組みの改革」
中小企業でも、できることはたくさんあります。
むしろ、こうした時代の変化に柔軟に対応できるのは、中小企業の機動力です。
