「それ、ハラスメントかも?」職場の空気を乱す“グレーゾーンハラスメント”への向き合い方(2025/8/8)
「何となく居心地が悪い」
「気にしすぎかもしれないけれど、集中できない…」
最近、明確な違法行為やパワハラ・セクハラには該当しないものの、周囲に強いストレスを与える“グレーな迷惑行為”が問題視されています。
これらはグレーゾーンハラスメント(通称:グレハラ)と呼ばれ、法的には白黒つけづらいが、放置すると職場の空気やチーム力をじわじわ蝕むやっかいな存在です。
今回は、そんなグレハラの事例・対策・実務上の注意点を解説します。
◆ グレーゾーンハラスメントとは?
グレハラとは、意図的ではないが周囲を不快にさせる迷惑行為のことを指します。
加害者本人に「嫌がらせ」のつもりはなく、「個性」「癖」「習慣」で済まされがちです。
しかし、実際には被害者や職場全体にとっては大きなストレス源となり、集中力の低下や人間関係の悪化、離職リスクにまでつながるケースも少なくありません。
◆ よくあるグレハラの事例
1. 無意識の独り言や舌打ち
「なんでこれやらないんだよ…」「はぁ、またか」など、明確に誰かを責めていない“つぶやき”が、周囲にプレッシャーを与えてしまうことがあります。
2. 足音・ドアの開閉など環境音
ヒール音や乱暴なドアの開閉など、不機嫌さや苛立ちを“音”で表現してしまう行動も、実は周囲に強いストレスを与えています。
3. 溜息・首振り・にらみつける
本人は無意識でも、視覚的・聴覚的に“批判”として受け取られ、職場の安心感を削ぐ行為に。
4. 「やめたら?」などの無責任な言葉
部下や同僚が落ち込んでいる時に「そんなに嫌ならやめたら?」と口にするのも、明確な攻撃意図がなくとも、心に深く突き刺さるハラスメントの一種です。
◆ グレハラの職場への影響
このような“些細だけれど継続的なストレス源”があると、職場の空気は確実に悪化します。
- 周囲の集中力が落ちる
- 無言の圧が蔓延し、自由に意見を出しにくくなる
- 雰囲気が悪いと感じて、人材が定着しなくなる
- 管理職が間に挟まれて疲弊する
特に、中小企業では物理的に距離が近く、逃げ場が少ないため、こうしたグレハラが問題化しやすいのです。
◆ 「でも、注意しづらい…」が経営側の本音
グレーゾーンであるがゆえに、「注意すると逆にトラブルになりそう…」「被害妄想と思われたくない」と、対応をためらってしまう経営者や上司も少なくありません。
とはいえ、放置してはいけません。
なぜなら、1人の問題を放置することは、組織全体の信頼性やチーム力を損なうリスクがあるからです。
◆ 辞めさせたいが…直接的な解雇は難しい
「困った社員には辞めてもらいたい」と考える経営者も多いですが、グレハラを理由にした即時解雇は極めて困難です。
あくまで「雰囲気が悪い」「空気が重い」といった主観的評価ではなく、客観的な記録・面談・改善指導のプロセスが必要です。
◆ 実務対応のポイント
1. 記録を残す(客観化)
・周囲からの聞き取り記録(匿名でOK)
・日付・内容・状況を残したメモ
→ 「被害者の印象」ではなく、「事実の積み重ね」が重要です。
2. 本人と面談を行う
・初回はあくまで“注意”ではなく“ヒアリング”
・自覚がない場合は、「こういう声がある」と伝え、事実と感情を切り離して伝えるのが効果的です。
・本人が反発しないよう、“良くなるための対話”という姿勢で臨むこと。
3. 就業規則に「職場秩序保持義務」などの文言を明記
→ グレーな行為にも一定のルールがあることを示すことで、注意や改善指導の正当性が高まります。
4. 場合によっては配置転換・退職勧奨も視野に
・改善が見られない場合や、他の社員への悪影響が大きい場合は、配置転換や退職勧奨(任意)も検討すべきです。
・ただし、このプロセスも法的リスクを避けるため、専門家の関与が望ましいです。
◆ 社内の安心感は、生産性と直結する
経営者にとって「明るい職場」「風通しの良い環境」という言葉は、やや抽象的に聞こえるかもしれません。
しかし実際は、社員が安心して働ける環境こそが、最大のパフォーマンスを引き出す土台となるのです。
グレハラは、組織の“見えない病巣”です。
早めに気づき、正しく向き合うことで、企業全体の生産性と定着率を改善できます。
◆ まとめ
- グレーゾーンハラスメントは“意識せずに周囲を傷つける行為”
- 本人には悪気がないケースが多いため、放置すると慢性化しやすい
- 周囲の集中力低下・離職リスク・組織風土の悪化にも直結
- 適切な面談・記録・制度整備で“法的トラブルを防ぎながら”対応可能
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