退職金制度に迷ったら、まずはここから!――企業型DCと中退共、何が違う?どう選ぶ?(2025/8/29)
こんにちは、綾部です。
「退職金制度、そろそろ何か整えなきゃと思ってるんだけど、何から始めればいいのか分からない」
これは、よくいただく経営者のお悩みトップ3に入ります。
特に中小企業では、「やってないけど、いつかは…」という状態のまま数年が経ってしまうことも少なくありません。
今回のテーマは、その“最初の一歩”に迷っている社長さんにこそ読んでいただきたい内容です。
■そもそも退職金制度は“必須”ではない
まず大前提として、退職金制度の導入は法律上の義務ではありません。
実際、退職金制度がない中小企業も多数あります。
ですが、採用競争力・定着率・経営者の資産形成の3つの観点から見れば、
いまや「ないと不利になる時代」に入っているのも事実です。
■2大選択肢:「中退共」と「企業型DC」
中小企業が検討する退職金制度の代表格といえば、以下の2つ。
・中小企業退職金共済(中退共)
・企業型確定拠出年金(企業型DC)
それぞれに特徴がありますが、制度の性格・柔軟性・社員の受け取り方に大きな違いがあります。
以下で比較してみましょう。
■違いが一目でわかる!中退共
vs 企業型DC
比較項目 |
中退共 |
企業型DC |
制度の種類 |
退職金共済(積立型) |
確定拠出年金制度 |
管理主体 |
中退共(独立行政法人) |
会社が選定する運営機関 |
掛金負担 |
会社のみ |
会社+(希望あれば)本人 |
運用方法 |
共済が一括運用 |
社員が自ら商品を選択して運用 |
受取時期 |
原則、退職時 |
原則60歳以降 |
転職時の持ち運び |
他の中退共加入企業に限り可能 |
iDeCoへの移管など柔軟に対応可 |
社員の“自分ごと化” |
比較的低い(受動的) |
高い(運用=自分の資産) |
■中退共が向いている企業
・経営者自身が運用の仕組みに関与したくない
・社員に投資・金融教育を求めない方針
・勤続年数に応じてシンプルに退職金を支払いたい
中退共は、いわば“従来型の退職金制度”。
決して悪い制度ではありませんが、社員のエンゲージメントや制度活用の広がりには限界があります。
■企業型DCが向いている企業
・従業員に「資産形成は自分で育てる」感覚を持ってほしい
・掛金額や制度内容を柔軟に設計したい
・採用力や制度の“見せ方”も重視したい
・経営者自身の退職金も一緒に準備したい!
企業型DCの大きな魅力は、「積み立てた資産は自分のものになる」という確実性と可視化。
さらに、社員側が制度に“参加している”感覚を持てることで、
定着率や金融リテラシーの向上にもつながるのがポイントです。
■実例紹介:B社の「切り替え成功」
あるサービス業のB社では、創業時から中退共に加入していました。
しかしある日、社員からこんな声が…。
「退職金って本当に出るんですか?」
「どうやって貯まってるんですか?」
これは経営者にとってショックな一言。
その後、企業型DCへの切り替えを決断し、次のような変化が起きました。
・掛金額をそのまま企業型DCに移行
・従業員向けに投資教育セミナーを実施
・社員一人ひとりが自分の資産残高を“見える化”できるように
結果として、社員の将来に対する意識が高まり、福利厚生への満足度も上昇。
離職率も2年で30%→10%以下に改善しました。
■制度選びで失敗しないために
どちらの制度も、会社にとって“福利厚生を整える”という意味では正解です。
ただし、会社のカルチャーや目指す働き方に合っているかどうかで選ぶことが大切です。
また、すでに中退共に加入している場合でも、企業型DCへの切り替えや併用も可能です。
「今のままでいいのかな?」と疑問に思ったら、それが見直しのタイミングかもしれません。
■まとめ:まずは“制度を知る”ことが第一歩
・中退共と企業型DCは、仕組みも目的もまったく違う
・今後の社員育成や経営戦略に合わせて選ぶべき
・どちらにも良さがあるが、柔軟性と意欲喚起力なら企業型DCが一歩リード
「退職金はあとまわし」になりがちですが、
制度導入は信頼の“見える化”でもあり、社員への最高のメッセージになります。
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