人手不足に“なってから”動くのは、もう遅い(2025/8/27)
3年後の経営と組織を見据えた採用戦略のすすめ
「急に退職者が出て、慌てて求人を出した」
「人が足りないのに、募集しても全然集まらない」
「そもそも採用活動を考える余裕すらない…」
福岡をはじめ、全国的に人手不足が深刻化するなか、多くの中小企業でこのような声が上がっています。
ですが、本来採用とは、“人が辞めてから”動くものではありません。
今回のテーマは、「経営目標と組織づくりから逆算して採用を設計する」という考え方。
さらに、時代に合った通年採用やデータベース活用など、未来に備える採用活動の進め方について、実務的にお伝えします。
■ 人が辞めてから動くと、採用は間に合わない
採用の現場で最もよくある失敗パターンが、
「急に辞めたから、急いで募集をかけたけど、全然来ない」
「面接しても妥協採用になって、結局また辞めてしまった」
という“事後対応型”の採用です。
採用には時間がかかります。
- 求人原稿の準備
- 掲載~応募までの期間
- 面接、選考、内定、入社までの調整
- 育成・戦力化にかかる時間
これらを含めると、実際に戦力になるまでには最低でも半年以上かかるケースも珍しくありません。
だからこそ、採用は「人が辞めたとき」ではなく、「辞める前」「必要になる前」に動くことが鉄則です。
■ まずやるべきは、3年後の経営目標を立てること
採用計画の前に必要なのは、経営計画の設定です。
- 「3年後に売上〇〇円を目指す」
- 「商品・サービスを新展開したい」
- 「エリアを拡大したい」
- 「働き方を多様化させていきたい」
こうした目標が明確になることで、初めて「どんな人材が、どのポジションで、いつまでに必要か」が具体的に見えてきます。
▶ 経営目標のない採用活動は、目的地のない航海のようなもの。
“その場しのぎ”から脱却するためには、まず「経営と採用の接続」が不可欠です。
■ 次に描くべきは、3年後の組織図
経営目標が定まったら、次は「その目標を実現するために、どんな組織体制が必要か」を具体的に描いていきます。
たとえば…
- 現在:社長+社員3名(営業2・事務1)
- 3年後:営業4名、事務2名、マーケ担当1名、チームリーダー2名
このように、“ありたい未来の組織図”を逆算的に描くことで、現時点で採るべき人材が明確になります。
▶「今すぐ戦力がほしい」ではなく、「未来の組織をつくるための採用」に切り替えることがポイントです。
■ 通年採用・データベースリクルーティングのすすめ
少子化・転職市場の変化などにより、「必要な時に、必要な人が応募してくれる」時代はすでに終わりました。
だからこそ、今注目されているのが通年採用とデータベース型の採用設計です。
▶ 通年採用とは?
「採用のタイミングを年1回の募集に限定せず、いつでも応募を受け付けておく」採用体制。
SNSや会社サイトに常時求人ページを設置し、「良い人がいたら話をする」姿勢が重要です。
▶ データベースリクルーティングとは?
過去の応募者や社員紹介・リファラル・外部ツール(スカウトサービスやタレントプール)を活用し、“今すぐ転職は考えていないけど将来性がある人”にアプローチする仕組みです。
▶ 求職者と“今すぐマッチ”しなくても、接点を持っておくことで、採用成功率が大きく変わってきます。
■ 「選ばれる会社」になるために、今できること
採用市場は、企業が選ぶ側から、“選ばれる側”の時代へと完全にシフトしています。
求職者が応募前にチェックするのは、
- 会社の理念やビジョン
- 社員のリアルな声や雰囲気
- 評価制度や育成方針
- SNSや口コミサイトの評判
です。
そして特にZ世代の若手層は、「共感できるか」「自分が成長できそうか」を重視する傾向があります。
では、“選ばれる会社”になるために、今できることとは?
- ホームページやSNSでの情報発信
- 採用特設ページの設置(社員紹介、育成フロー、Q&Aなど)
- 採用説明資料や動画の作成
- 応募者への丁寧なレスポンスと対応
▶「募集を出したら応募が来る」ではなく、“選ばれる努力”を継続的にすることが、採用力の差を生み出します。
■ 綾部事務所がサポートする採用の進め方
綾部事務所では、採用支援を「その場の求人支援」ではなく、3年後の組織と経営に向けた採用設計として捉えています。
- 経営目標の明確化と組織図の設計支援
- 求人原稿の改善・法令チェック
- 通年採用体制の整備
- 応募データの管理とアプローチ設計
単発的な採用ではなく、“採用体質そのものをつくる”支援を行っています。
■ まとめ
採用は「必要になったときに動く」から「未来の組織をつくるために今から動く」時代です。
- 3年後、どんな組織で、どんな働き方をしていたいか?
- その実現のために、今、どんな人材が必要か?
- そして、その人に選ばれる会社であるために、今何を整えるべきか?
こうした問いを持つことが、これからの時代の採用力を決定づけます。
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