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【2026年10月開始】保険料調整制度とは?パートの社会保険料軽減と会社の手続きを解説(2026/10/16)

「パートの方にもう少し働いてもらいたいけれど、社会保険に入ると手取りが減ると言われた」「保険料を軽減する新しい制度が始まったと聞いたけれど、自社も使えるの?」

こうした悩みに関わるのが、2026年10月に始まった「保険料調整制度」です。一定の事業所に勤務する短時間労働者について、健康保険料・厚生年金保険料の本人負担を軽減する仕組みです。

この記事では、初めて労務を担当する方に向けて、対象条件から給与計算・申出手続きまで順番に説明します。

※2026年10月8日時点の日本年金機構の公表情報に基づいています。

保険料調整制度とは?パートの社会保険料負担を通算3年間軽減

社会保険に新しく加入すると、給与から本人負担の保険料が差し引かれます。「働く時間を増やしても手取りが減ってしまう」と、勤務時間を抑える方もいます。このような就業調整への対応として設けられたのが、保険料調整制度です。

仕組みは、会社が本人の保険料の一部を一時的に追加負担し、その追加負担分を後で保険料の請求額から差し引いてもらうというものです。所定の条件で還付されれば、会社の最終的な保険料負担は増えません。

軽減を受けても、将来受け取る厚生年金の額は減りません。ただし、本人負担がすべてなくなる制度ではなく、手取り額全体を保証する制度でもありません。

利用期間は、事業所が申し出た月から通算3年間です。途中で入社した従業員に、入社時から別に3年間の枠が与えられるわけではありません。

出典:日本年金機構「保険料調整制度とは」

自社は対象?まずは事業所の条件を確認

この制度は、パートを雇っているすべての会社が使えるものではありません。まず事業所が対象かを確認し、その後に対象者を確認します。

2026年10月以降に労使合意で加入範囲を広げる事業所などが対象

主な対象は、2026年10月1日から2035年9月30日までに「任意特定適用事業所」となる事業所です。これは、企業規模の基準に満たない事業所が、労使合意と申出により短時間労働者を社会保険の加入対象とする仕組みです。

また、2027年10月以降の適用拡大で新たに対象となる事業所も、利用対象となります。

適用拡大に伴い保険料調整制度の対象となる事業所
時期 厚生年金保険の被保険者数の区分 
2027年10月から36~50人
2029年10月から21~35人
2032年10月から11~20人
2035年10月1日10人以下

※人数は、単純な在籍人数ではありません。企業規模要件では短時間労働者を除く厚生年金保険の被保険者数等で判定します。

個人事業所には、任意適用事業所として加入している事業所が2027年10月1日~2035年9月30日に被保険者数51人以上となって特定適用事業所になる場合や、2035年10月1日以降に任意適用事業所となる場合の対象区分もあります。

すでに短時間労働者への適用がある事業所は注意

制度開始前から特定適用事業所や任意特定適用事業所となっている場合などは対象外です。対象区分に該当する前に被保険者数が常時51人以上となった事業所にも除外条件があります。「人数が少ないから使える」とは判断せず、適用状況と該当日を確認しましょう。

出典・詳しい対象区分:日本年金機構「対象となる事業所・申出期限」

対象となる従業員は?標準報酬月額12万6,000円以下が条件

制度を利用する事業所で、次の両方に該当する方が対象です。

「パート」という呼び名だけで対象になるわけではありません。社会保険上、短時間労働者として加入しているかどうかがポイントです。

標準報酬月額は「その月の給与額」ではありません

標準報酬月額は、社会保険料の計算に使う等級ごとの金額です。給与等の報酬を一定の幅に区分して決めるため、実際の支給額と同じとは限りません。毎月の給与明細の金額だけで判断せず、決定されている標準報酬月額を確認しましょう。

対象者全員に適用。一部の人だけを選ぶことはできません

制度は事業所単位で適用されます。「希望するAさんだけ軽減し、Bさんには適用しない」という取扱いはできません。

複数の事業所で社会保険に加入している方や、産前産後休業・育児休業等で保険料が免除されている方は対象外です。また、70歳以上の方は健康保険料のみが対象となり、高齢任意加入による厚生年金保険料は対象外です。

出典:日本年金機構「対象となる被保険者」

社会保険料はいくら軽減される?負担割合と計算例

本人の負担割合は、標準報酬月額と事業所の制度利用期間によって変わります。通常の労使折半では本人の負担は保険料全体の50%ですが、制度利用中は次の割合になります。

保険料全体に対する本人の負担割合
 標準報酬月額  1~2年目  3年目 
8万8,000円以下25%37.5%
9万8,000円30%40%
10万4,000円36%43%
11万円41%45.5%
11万8,000円45%47.5%
12万6,000円48%49%

この割合は給与額に掛ける割合ではなく、保険料全体に対する割合です。3年目は軽減が小さくなるため、給与控除額の見直しが必要です。

標準報酬月額8万8,000円の厚生年金保険料の例

厚生年金保険料率18.3%で計算すると、保険料全体は月額1万6,104円です。

会社は通常の負担8,052円に軽減分4,026円を加え、1万2,078円を一時的に負担します。この追加分が、後から調整されます。上の例は厚生年金保険料のみで、健康保険料等は別に計算します。

賞与・介護保険料・子ども・子育て支援金は対象外

軽減対象は、月額の健康保険料・厚生年金保険料です。賞与にかかる保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金は対象外のため、給与計算では分けて扱う必要があります。健康保険料率も加入先によって異なります。

出典:日本年金機構「保険料額の計算方法」

会社が追加負担した保険料はいつ戻る?3カ月後の保険料から調整

会社の追加負担分は、一度納付した後、3カ月後の保険料額から差し引く方法で還付されます。「従業員の控除額が減った分、納付額もすぐに減らしてよい」という扱いではありません。

2026年10月分保険料の追加負担が調整される流れ
段階会社の対応
10月分保険料の給与控除本人負担を軽減し、軽減分を会社が一時的に追加負担
10月分保険料の納付告知額を翌月末の納付期限までに納付(休日の場合の期限変更に注意)
2027年1月分保険料10月分の追加負担額が差し引かれる。納付は原則として翌月末

給与から何月分の保険料を控除するかは、自社の徴収方法を確認してください。保険料の対象月、給与の支払月、会社の納付月を分けて管理すると混乱を防げます。

また、保険料を納付期限までに納めず、さらに督促状の指定期限までにも納めなかった場合、その月の追加負担分は還付されません。資金繰りも含め、期限内の納付が必要です。

出典:日本年金機構「追加負担した保険料の還付」

申出手続きと期限は?給与計算の準備も忘れずに

保険料調整開始申出書を提出する

利用するには、事業主が「保険料調整開始申出書」を事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。2026年10月8日時点の案内では、提出方法は郵送または窓口持参で、添付書類はありません。

任意特定適用事業所になるための申出や、従業員の資格取得届とは別の手続きです。必要な届出を確認して準備しましょう。

受付月から開始。過去にさかのぼることはできません

期限は、制度の利用が可能となった日から2年が経過した日が属する月の前月までです。例えば、2026年10月中に任意特定適用事業所となった場合、2028年9月末が申出期限となります。

ただし、期限まで待てば過去分も軽減されるわけではありません。利用は申出書の受付月からで、遡及できません。開始したい月に受付されるよう、余裕を持って準備してください。

出典:日本年金機構「開始申出の手続き」

労務担当者が準備する実務チェックリスト

途中でやめられる?対象者が0人になった場合の扱い

制度の利用を始めると、会社からの申出で途中終了することはできません。

ただし、申出期限内に対象者が0人となった場合は、その月から自動停止します。自動停止期間は利用期間から除外され、再開するには申出期限内に「保険料調整停止解除申出書」の提出が必要です。再開も受付月からとなり、遡及できません。

一方、申出期限を過ぎてから対象者が0人になっても、自動停止されず利用期間は進みます。利用期間内に対象者が再び現れた月は、その対象者の保険料が軽減されます。「0人の期間は必ず延長できる」と考えないようにしましょう。

出典:日本年金機構「自動停止・停止解除の手続き」

参考:日本年金機構「保険料調整制度のご案内」

「自社で使える?」から、綾部事務所にご相談ください

保険料調整制度は、従業員の保険料負担を軽減し、安心して働いてもらうために活用したい制度です。一方で、対象となる会社・従業員の確認、申出期限の管理、給与計算への反映など、担当者だけで判断するには迷う場面もあります。

「制度を調べたけれど、自社に当てはめるとよくわからない」——そんな段階から、綾部事務所にご相談ください。

綾部事務所では、貴社の加入状況や従業員の働き方を踏まえ、制度の利用可否や必要な対応をわかりやすく整理します。社会保険の手続きから給与計算、従業員への説明に関するご相談まで、実務につながるサポートをいたします。

制度への対応を一人で抱え込まず、労務の専門家と一緒に進めませんか。まずは「当社も対象になりますか?」と、お気軽にお問い合わせください。貴社に合った進め方を、綾部事務所が一緒に考えます。

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