「不機嫌な社員」を放置していませんか?会社が知っておくべきフキハラ対策(2026/10/28)
~職場の空気を守ることも、経営者の大切な仕事です~
こんにちは、社会保険労務士の綾部です。
以前、当事務所のブログで「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」について取り上げたところ、多くの方にご覧いただきました。それだけ職場の人間関係に悩んでいる方が多いのかもしれません。
さて、今回は少し視点を変えて、経営者・会社側から見たフキハラ対策について考えてみたいと思います。
皆さんの会社には、こんな社員はいませんか?
- ・機嫌が悪いと挨拶をしない
- ・気に入らない仕事を頼まれると大きなため息をつく
- ・特定の社員にだけ冷たい態度を取る
- ・注意されると露骨に不機嫌になる
- ・周囲がその人の顔色をうかがって仕事をしている
「仕事はできる人だから……」
「昔からああいう性格だから……」
そう考えて、見過ごしていないでしょうか。
実は、こうした状況を放置することは、会社にとって決して小さな問題ではありません。
1.たった一人の不機嫌が会社全体に影響する
例えば、ある職場に仕事はできるものの、いつも不機嫌なベテラン社員がいるとします。周囲の社員は、その人の機嫌を損ねないように仕事を進めます。
質問したくても聞けない。間違いに気づいても指摘できない。必要な相談が後回しになる。
その結果、業務上のミスや情報共有の遅れにつながる可能性があります。さらに、若手社員が「この職場では働き続けたくない」と感じて退職してしまうことも考えられます。
会社にとって本当に怖いのは、不機嫌な社員がいることだけではありません。
その人に周囲が合わせることが、職場の当たり前になってしまうことなのです。
2.不機嫌なだけでハラスメントになるの?
ここは誤解してはいけないポイントです。
「フキハラ」は法律上の独立したハラスメントの名称ではありません。また、人間ですから、誰でも機嫌が悪い日はあります。不機嫌な表情をしただけで、直ちに法律違反になるわけではありません。
ただし、無視や威圧的な態度などによって就業環境が害され、パワーハラスメントの要件を満たす場合には、法的な問題になる可能性があります。
厚生労働省では、職場のパワーハラスメントについて、次の3つの要素を示しています。
- ・優越的な関係を背景とした言動
- ・業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動
- ・就業環境への悪影響
大切なのは、「本人の性格」ではなく、「具体的にどのような行動があり、業務にどのような支障が生じているか」を見ることです。
3.会社は「問題行動」に対して適切に指導できる
最近は、経営者の方からこんなお話も聞きます。
「注意したらハラスメントと言われそうで怖い」
「社員に強く言えなくなった」
しかし、必要な指導まで遠慮する必要はありません。
例えば、業務上必要な質問に繰り返し回答しない、正当な業務指示に従わない、他の社員の仕事を妨げるといった行為があれば、会社は事実を確認したうえで改善を求めることができます。
その際に重要なのは、感情的に叱ることではありません。
「あなたは性格が悪い」
ではなく、
「昨日の会議で質問に回答しなかったことで、作業が進められませんでした。今後は必要な確認に対応してください」
というように、事実と改善してほしい行動を具体的に伝えることです。
必要に応じて指導内容を記録し、改善状況を確認することも大切です。ただし、十分な事実確認をせずに懲戒処分などを行うことは避けなければなりません。
4.「不機嫌な社員」を生み出す職場環境にも目を向ける
一方で、会社側にも考えていただきたいことがあります。
社員が不機嫌になる背景に、過重な業務負担、曖昧な役割分担、不公平感、コミュニケーション不足などが隠れている場合もあります。
もちろん、事情があるからといって、周囲に不適切な態度を取ってよいわけではありません。
しかし、本人への指導だけでなく、職場環境の改善にも取り組むことで、再発防止につながる可能性があります。
人を注意するだけでなく、問題が起こりにくい仕組みをつくる。これも経営者の大切な役割です。
5.中小企業が取り組みたい3つの対策
まず、職場で求められる基本的な行動を明確にしましょう。
挨拶、報告・連絡・相談、業務指示への対応、相手を尊重した言動などについて、管理職も一般社員も共通のルールを持つことが重要です。
次に、相談窓口と対応手順を整備しましょう。
相談を受けたら、双方から丁寧に事情を聞き、必要な対応を検討する。相談したことを理由とする不利益な取扱いを防ぐことも必要です。
そして、管理職教育を行いましょう。
現場の責任者が問題行動を見過ごしたり、反対に感情的な指導をしたりしないよう、適切な対応方法を共有することが大切です。
6.「働きやすい会社」と「甘い会社」は違う
私は、働きやすい会社とは、誰も注意されない会社ではないと思っています。
間違いがあれば指摘する。改善すべきことがあれば改善を求める。
一方で、頑張っている社員には感謝を伝え、困っている社員には必要な支援をする。
言うべきことは言い、お互いを尊重できる会社。
そんな職場こそ、これからの人材不足の時代に選ばれる会社になるのではないでしょうか。
社員を大切にすることと、会社の秩序を守ることは、決して矛盾しません。
人を大切にしながら、組織として守るべきルールも大切にする。
綾部事務所は、そんな健全な職場づくりを応援しています。
