最低賃金アップで月給換算1万円増!? ―人件費高騰を乗り切る“外注×DX”戦略とは?(2025/10/10)
「今年もまた最低賃金が上がるらしい……」
そんなニュースに、思わず電卓をたたいた経営者の方も多いのではないでしょうか。
令和7年度の最低賃金は、全国平均は1121円と、前年度から66円アップ。引き上げ幅は過去最大となります。
一見わずかな金額に見えますが、フルタイム(1日8時間×月20日)に換算すると、
66円 × 160時間 = 約10,560円/月
つまり、1人あたり月給で約1万円の人件費増となります。
従業員が10人いれば月10万円、年間120万円の負担増。
30人規模の企業なら年間で360万円を超える影響がある計算です。
月給社員にも影響が広がる最低賃金引き上げ
最低賃金の上昇は、パートやアルバイトだけの話ではありません。
例えば、月給者の昇給が毎年5,000円程度にとどまっていた場合、最低賃金のペースに追いつかない可能性が高くなります。
その結果、「新入社員と長年働いている社員の給与がほとんど変わらない」という事態が発生し、モチベーションの低下や離職リスクの増加にもつながります。
実際の試算を見てみましょう。
| 年度 | 新入社員(月給換算) | 勤続5年社員(昇給5,000円/年) |
| 2024年 | 180,000円 | 200,000円 |
| 2025年 | 190,000円 | 205,000円 |
| 2026年 | 200,000円 | 210,000円 |
| 2027年 | 210,000円 | 215,000円 |
昇給が追いつかないまま年数が経てば、「今から入る人とほとんど変わらないのか」と、組織の空気感に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
人件費増=人を雇う以外の選択肢を検討する時期
では、このような人件費上昇にどう対応すべきか?
キーワードは次の2つです。
- ・外注化(業務の一部を外に任せる)
- ・DX化(システム導入による業務効率化)
この2つは、「人を増やさずに成果を出す仕組み」として、いま多くの中小企業が取り入れ始めています。
外注できる業務は外に出す発想を
業務の中には、必ずしも社内で完結させる必要のないものが多く存在します。
たとえば以下のような業務です。
| 業務 | 外注の例 | 主なメリット |
| 給与計算 | 社労士 | 正確性・専門性・ミスの削減・ 給与計算担当者の退職に慌てなくてよい |
| 採用支援 | 外部の採用支援サービス | 求人原稿作成・媒体運営支援・定着支援 |
| 記帳代行 | 税理士・記帳代行業者 | 正確性・専門性・ミスの削減 |
| 請求書発行 | 請求代行サービス | 未回収金リスクの低減・ミスの削減 |
社内でなんとか頑張ってきた業務も、外注することでコストや労力を抑え、従業員が本来の業務に集中できる環境を整えることが可能です。
また、上記の業務は中小企業において属人化している可能性も高く、担当者が突然退職してしまった場合に業務が滞るリスクもあります。
綾部事務所では、これらの外注業務の導入や切り出し方法のアドバイスも行っています。
DX化で「人に頼らない仕組み」を作る
また、外注とセットで考えたいのがDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進です。
例えば次のようなツールや仕組みが、業務効率を大きく向上させます。
- ・勤怠管理システムの導入
└ スマホ打刻、残業自動集計、有休管理の自動化 - ・給与明細のWeb配信
└ 印刷・封入・郵送作業の廃止(郵送費用削減) - ・シフト管理のクラウド化
└ アプリでの調整や自動反映が可能に
これらは一度導入すれば、毎月の定型業務が劇的に軽減され、人手をかけずに正確な運用が可能になります。
綾部事務所では、クラウド勤怠システムの導入・初期設計・運用支援まで一貫してサポートできます。
採用においても“人件費効率”を意識すべき時代
人件費を抑えるうえで「採用の質」も見直すべきです。
重要なのは、「安く雇う」ではなく「長く活躍する人を採る」という考え方です。
せっかく採用しても、数ヶ月で辞めてしまえば教育コストが無駄になり、逆にコスト増になってしまいます。
綾部事務所では、
- ・採用ターゲットの明確化
- ・求人票や面接内容の設計
- ・入社後の定着支援策
など、“会社に合った人材を採用する仕組みづくり”をご提案しています。
まとめ|「人を増やす」から「仕組みで乗り切る」へ
政府は近年、「2030年代半ばまでに最低賃金(全国加重平均)を時給1500円へ引き上げる」という目標を掲げてきましたが、現政権はこの達成時期を「2020年代中」に大きく前倒しする方針を打ち出していますので、最低賃金の引き上げは、これからも続いていくと予想されています。
人件費の増加に頭を抱えるのではなく、次のような視点で未来を見据えることが大切です。
- ・外注できる業務は外注し、変動費化する
- ・勤怠・給与・手続きをDX化し、人件費以外のコストを削減する
- ・採用から定着までを見直し、“コスパの高い人材確保”にシフトする
こうした戦略的な労務運営こそが、人件費高騰時代の“勝ち残り企業”の共通点です。
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